三輪太郎さんの辻原登論『『冬の旅』について』をアップしましたぁ。三輪さんは『『豊饒の海』あるいは夢の折り返し点』で第33回群像新人文学賞評論部門を、『ポル・ポトの掌』で第1回日経小説大賞佳作を受賞された小説家で文芸批評家です。批評家としての専門は三島由紀夫ですが、重里徹也さんとの対談集『村上春樹で世界を読む』も出版されています。
作家のタイプもいろいろです。小説家は小説に専念することが多いですが、批評意識がないかといえばそんなことはない。発表するかどうかは別として、鋭い批評意識をお持ちの作家はたくさんいらっしゃいます。むしろ現在のように先行きが見えにくい文学状況では、作家にも一定の批評的見識が求められるでしょうね。三輪さんのように、小説を書きながら批評も手掛ける作家は今後増えていくような気がします。
三輪さんは三島由紀夫の『ほんとうの文学は、人間というものがいかにおそろしい宿命に満ちたものであるかを、何ら歯に衣着せずにズバズバと見せてくれる。・・・一番おそろしい崖っぷちへ連れていってくれて、そこで置きざりにしてくれるのが「よい文学』であるという定義を信奉されていたようです。ただ現在の作家たちは、『三島とは正反対に、希望を語るのに忙しい』。しかし辻原さんの『冬の旅』は『三島の定義に合致する、「よい文学」だった』と論じておられます。優れた『冬の旅』論だと思います。