谷輪洋一さんの文芸誌時評『No.007 群像 2013年12月号』をアップしましたぁ。特集は『アンソロジー 名探偵登場』です。探偵小説の新作が掲載されているわけではなく、内容は『13人の作家が名探偵へ捧ぐオマージュ』です。小説文芸誌の特集はけっこういい加減ですが、与えられた〝お題〟に短期間でどう解答を提出できるかも作家の力量のうちでしょうね。探偵小説は謎解きがメインになって進む小説です。ただ探偵小説について書くことは、作家自身の謎解きにもつながってしまふかもしれません。
谷輪さんは『謎を謎として認識すれば、少なくともその謎が解けるまでは付き合おうと思う。謎が解ければ、カタルシスもある。しかし、その「謎」そのものに価値を見い出せなければ、誰が犯人だろうと、真相がどうだろうと、どうでもいい』と書いておられます。谷輪さんは探偵小説について書いているのですが、これは作家に対しても適用できます。極端な言い方ですが、作家は〝謎〟がなくなってしまえば終わりです。次にどんな作品が出るか、どんな驚きを与えてくれるのかといふ読者の期待がなくなれば、作家の魅力は色褪せてしまう。
文壇・詩壇には業界内有名作家がたくさんいます。たいていは過去に優れた作品を書いた作家たちです。だからこそ現在のステータスがあり、秀作を〝書くかもしれない〟といふ期待がある。しかし作家の表現ポテンシャルともいえる〝謎〟がもう無くなってしまった作家もたくさんいます。メディアがどの作家を重視するかはメディアの事情です。メディア内部の人間にとってすら簡単には変えられないお家事情のようなものです。しかし時には達観主義も必要です。雑誌の表紙に載った作家の名前をざっと眺め、読んでみたい作家を探せばいい。探偵小説に限らず読者は謎を、未知を求めています。それを感じさせない作家の名前には、視線が止まらないだろうと思います。
■ 谷輪洋一 文芸誌時評 『No.007 群像 2013年12月号』 ■