小原眞紀子さんの 『 Ongaku & Bungaku by Kingyo 』 『 No.012 赤いスイートピー - 松本隆 (歌・松田聖子) 』 をアップしましたぁ。女性歌手がアイドルと呼ばれるようになったのは高度経済成長期くらいからだと思いますが、山口百恵、ピンクレディー、松田聖子さんらは中でも特別な存在でしょうねぇ。外賀伊織さんが現在ではビートルズ学が確立されていると書いておられましたが、松田聖子学も可能ぢゃないかと思います。聖子さんはある時期に、男性ファンに支えられるアイドルから、女性ファン中心のアイドルに変わりました。
それを小原さんは 『女性が支持する女性というのは相場が決まっていて、男に負けない強い女である。・・・しかし 「赤いスイートピー」 の少女は 「I will follow you」 と言い、・・・少女が思うところをただ率直に語るだけで、相対的に強く見える。・・・この 「赤いスイートピー」 で、戦後は完全に終わった。貧しさから這い上がるための 「細腕繁盛記」 的な女の強さではなく・・・男についていってるだけでも生来の自然な強さが現われる』 と書いておられます。そうかもしれませんねぇ。聖子さんはアイドルの自覚を持った初めての女性歌手だったかもしれません。
ほんで不肖・石川は、小原さんの 『だから 「何故 あなたが 時計をチラッと見るたび 泣きそうな気分になるの?」 と歌われたときに戦後社会は崩壊した。その鮮烈な抒情、それを育んだ平和と豊かさの前に、世界は膝まづいたのだ。・・・ベルリンの壁の崩壊の前駆として、私が記憶しているのは、そういう瞬間だったと思う』 といふ記述を読んでバカウケしました (爆)。戦後文学って今の若者が読んだら、『よーするに腹減ったってことでしょ』 といふことになるかもしれません。この 〝腹減った〟 は精神的飢餓も含みます。
しかし戦後社会はどこかの地点で大きく変わったのです。一度目は高度経済成長期、二度目は80年代末から始まり現在まで続く高度情報化社会のあたりでしょうね。それまでは携帯もネットもなかったことなど、今の生活に慣れてしまえばちょっと想像できないかもしれません。そしてその節目節目に時代の無意識を集約したようなアイドルがいます。聖子さんはシンガーソングライターではありませんが、その背後に 〝松田聖子プロジェクト〟 とでも呼ぶべき頭脳集団がいました。聖子さんは彼らが生み出したアイドルでもあります。
■ 小原眞紀子 『 Ongaku & Bungaku by Kingyo 』 『 No.012 赤いスイートピー - 松本隆 (歌・松田聖子) 』 ■