外賀伊織さんの連載恋愛小説 『ぐるぐる』 (第 06 回) をアップしましたぁ。前半の山場にさしかかりましたね。栞ちゃん、自らが招いたこととはいえ、大変な状況におちいっています。家庭問題に加え恋愛問題も抱え込んでしまひました。『多摩川左岸』 もそうでしたが、外賀さんは主人公を追いつめるのが好きだなぁ (笑)。まあ、追いつめられてこそ人間心理の本質のようなものが現れるのですけど。で、主人公の追い込みはこれで終わりかな。外賀さんのことだから、もっと追い込みそうな気もしますけんど。
栞ちゃんは女性の主人公ですが、男でも、こういふタイプの若者はいるなぁと不肖・石川は思います。子供っぽいんですが、ある面だけは非常に大人といふか、老獪な面もある。外賀さんは 『多摩川左岸』 や 『ぐるぐる』 で一種のビルドゥングスロマンを書いておられると思いますが、まだ未熟なところを残した個人に強大で不気味な社会が襲いかかってくるといふ主題がお好きなようです。恋愛小説なんですが、社会と個の関係もまた作品の主題なのかもしれません。
そんで以前女性を主人公にすることについて外賀さんと話したことがあるんですが、書きにくいといふことはまったくないようです。『女性は 24 時間自分が女性だと意識しているわけではないよ。男も同様だね。グッと引いて観察すると、女性と男性には生物学的、社会学的差異が確実にあります。でも個々の女性・男性を知れば知るほど、例外が多くなって捉えどころがなくなってしまう。だから一種の女性性・男性性のパターンを作って、そこから例外を描き出す方がスムーズにいくと思う』 というお話をされていました。
小説といふ、基本的には俗な物語ではそういった二項対立の設定が必要なんでしょうね。外賀さんは 『小説といふジャンルは意外なほど底が固いよ。自由詩のような修辞的操作では、前衛的な作品を書くことはできても、ほんとうの意味での前衛作品はまず生まれないだろうね』 ともおっしゃっていました。確かにそうかもしれないなぁ。ジョイスや安部公房の前衛作品を読んでいても、核となっている人物設定は意外にオーソドックスだと思います。男は砂のお城を作り、女はそれを優しい波で崩すといったところでしょうかぁ (爆)。
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■ 外賀伊織 連載恋愛小説 『ぐるぐる』 (第 06 回) テキスト版 ■