水野翼さんの文芸誌時評 『 No.011 S-F マガジン 2013 年 09 月号』 をアップしましたぁ。S-F マガジンさんの夏恒例の 『サブジャンル別 SF ガイド 50 選』 特集を取り上げておられます。SF 小説を内容に従ってさらにジャンル分けして、そのカテゴリに属する作品を紹介していく特集のようです。SF 好きの読者に向けたお遊び企画だと言っていいかと思います。
SF がさらにサブジャンルに分類できるのは、それが商品として書かれているからです。推理サスペンス小説でも同じような分類ができるでしょうね。しかし水野さんが書いておられるように、『恋愛小説において 「病死・純愛もの」 とか 「歳の差もの」 とか、おおっぴらに嗜好をジャンル分けされているのは、あまり見ない』 (笑)。芥川賞系の純文学作品になるとまったくジャンル分けは行われなくなります。しかしだからといって、純文学作品の方が SF や推理サスペンス小説より上等な文学だとは言えないと思います。
SF や推理サスペンス小説がサブジャンル分類できるのは、それらの小説がよく読まれているからだとも言えます。読者は微細な差に敏感なんですね。ただ水野さんが書いておられるように、実際には純文学小説も 「伝統私小説系」、「実験小説または SF からのかっぱらい系」、「作者の年齢肩書きルックス売りもの系」 などに分類できます。純文学小説もまた充分にステレオタイプ化している面があります。
大衆小説、純文学、SF、推理サスペンス小説といった分類はまずメディアが行い、時に作家が自分の意志で引き受けるものです。メディアの要請を自己の使命とした作家はその道のプロです。ただ小説は細分化されたジャンルから構成されていません。どのジャンルに分類されようと優れた作品を書くことはできます。小説文学の傑作は、発売当時に大ヒットしなくともロングセラーで読み継がれている作品が多い。十分売れているわけです。そのあたりをよく考えると、小説文学の本質がどんなものかわかるかもしれません。
■ 水野翼 文芸誌時評 『 No.011 S-F マガジン 2013 年 09 月号』 ■