玉田健太さんの映画批評 『映画金魚』 『 No.008 物語映画の誕生 ― 濱口竜介 『何食わぬ顔』 (short version) 』 をアップしましたぁ。濱口竜介さんは 1978 年神奈川県生まれで、東京大学文学部と東京藝術大学大学院映像研究科を卒業された気鋭の若手監督です。『何食わぬ顔』 は濱口監督が東京藝大在学中に撮った自主映画で、国内外で高い評価を受けています。初期作品ですが 『何食わぬ顔』には short version と long version があり、監督にとって重要な作品です。フィルモグラフィによると、濱口監督は現在までに 14 本もの映画を撮っておられます。才能豊かなだけでなく精力的な監督ですね。
玉田さんは 『何食わぬ顔』 について、『すべての行為や出来事はその輪郭が拡散し、呼応しあい、そもそも一つの行為を他と切り分けるような境界などない』 と書いておられます。しかし玉田さんは、『何食わぬ顔』 が曖昧な作品だと指摘しておられるわけではない。自主制作映画や自費出版などは、本来どうしても表現したいことを抱えている作者が着手するものです。濱口監督の初期作品には表現への強い欲動があります。映画は絵が動くのが基本です。そして絵の中から物語が起ち上がってこなければならない。どちらも必要不可欠な要素でが、そのバランスが難しい。玉田さんはそれを、『事物から出発し物語の一歩手前に留まること。これは物語が存在することを観客に明白に示しており、単なる物語を語る上での拙さではない。むしろ 『何食わぬ顔』 は物語映画が誕生するまさにその瞬間に観客を立ち会わせようとするものなのだ』 と解説しておられます。
濱口監督には今までの監督にはない新しい才能を感じます。そういう若手映画作家の作品を、玉田さんのような気鋭の若手批評家が批評するのは実にいい光景ですね。優れた作品と的確な批評があって、初めて新たに生み出された作品の意義が誰の目にも明らかになっていくのだと思います。玉田さんの映画批評、これからも楽しみですぅ。
■ 玉田健太 映画批評 『映画金魚』 『 No.008 物語映画の誕生 ― 濱口竜介 『何食わぬ顔』 (short version) 』 ■