星隆弘さんの連載演劇批評 『 星隆弘の難しい演劇評 No.012 ふじのくに せかい演劇祭 2013 参加作品 『Wainting For Something』 』 をアップしましたぁ。サミュエル・ベケットの 『ゴドーを待ちながら』 を原案にした中野成樹さん作・演出の作品です。このところベケットの 『ゴドー』 が再び注目されているようです。先の見えない時代であることの反映かもしれませんし、『ゴドー』 が演劇にとってはもちろん、人間存在についてなにかの本質を衝いた作品だからかもしれません。
中野さんの作品は人か物かも定かでない何かを待つ 『Wainting For Something』 と題されていて、舞台装置も工事現場を意識しているようです。舞台では日本語と韓国語が飛び交い、字幕にはさらに英語が表示されますが、それが 〝Something〟 の正体を明らかにすることはない。星さんは 『言語は一定の規定を演劇 (と観劇) に与えるが、それによって演劇 (と観劇) は言語化の投網の目を抜け落ちていったいわば <プレ – 言語> の海の浮島となる』 と評しておられます。文学と異なり、演劇では言葉は表現主題のささやかな指標=浮島に過ぎないといふことだと思います。
演劇の魅力は目の前で起きる事件の圧倒性にあります。事件が起こってから初めてその言語化が始まるわけです。つまり 〝現在〟 の言葉には、私たちがいわゆる言語作品として思い浮かべる体系性・整合性が希薄です。単に言葉を発する肉体があり、その言葉を手がかりに、後に無言の肉体の蠢きが物語化されるわけです。中野さんの 『Wainting For Something』 は、男女問題、異言語問題、日韓問題など様々な読解の可能性を示唆しながら、〝事件としての演劇〟 になっているようです。
■ 星隆弘 連載演劇批評 『 星隆弘の難しい演劇評 No.012 ふじのくに せかい演劇祭 2013 参加作品 『Wainting For Something』 』 ■