谷輪洋一さんの文芸誌時評 『No.002 別冊 文藝春秋 2013年05月号』 をアップしましたぁ。金井美恵子さんの 『お勝手太平記』 を取り上げておられます。旺盛に活動を続けておられる作家さんで、近々平凡社からエッセイ集全 4 巻が刊行されるようです。
谷輪さんは 『現在、4、50 歳代の女性の書き手は、想像以上の多大な影響を受けているという。まさしく 「金井美恵子神社」 がなくてはならないらし』 いと書いておられます。そうでしょうねぇ。不肖・石川、もうだいぶ前ですが 『愛の生活』 を読んだ時、これは小説でいいのか?と思いましたもの。あの作品は詩に分類されても異和感はありません。つまり、ジャンルの枠組みをはみ出してしまう作品です。
小原眞紀子さんが金魚連載の 『文学とセクシュアリティ』 で、男性性を制度、女性性を非制度 (制度破壊) 的ベクトルとして分類されています。必ずしも生物学的な分類ではないですが、制度破壊的な指向を持つ女性作家が多いのは確かだと思います。男性作家の方が圧倒的に制度に従順――つまり小説らしい小説を書き、詩らしい詩を書いています。
金井さん、伊藤比呂美さんなどは詩人でもありますが、江國香織さんも童話作家という、文学的制度の外から現れて人気作家になった方です。小説を書くにしても、優れた女性作家には、必ずしも文学ジャンル (制度) にとらわれない独自の場所を要求する (必要とする) 作家が多いと思います。作家が制度に沿おうとすれば、むしろ作家独自の貴重な資質が壊れてしまうのではないでしょうか。
金井美惠子さんが、その資質に忠実に、社会的制度になじむことを拒否することで作家として苦しい道を歩むことになったのは確かだと思います。しかしこれからでしょうね。金井さんに毒舌を浴びせかけられることになってしまふかもしれませんが、金井さん的エクリチュールは年を取ることで研ぎ澄まされる可能性があります。もうなんも考えずにお好きな書き方でじゃんじゃん小説をお書きになった方がよろしと思います。不肖・石川も大好きな作家さんなのであります。
■ 谷輪洋一 文芸誌時評 『No.002 別冊 文藝春秋 2013年05月号』 ■