玉田健太さんの 『映画金魚 No.002 ビル街の中の子供 - フィルムセンター 清水宏特集』 をアップしましたぁ。玉田さんは早稲田大学の大学院で映画を研究しておられる気鋭の批評家です。今回は東京・京橋にある東京国立近代美術館フィルムセンターで行われている 『生誕110年 映画監督 清水宏』 を取り上げておられます (2013/6/5~30、7/9~8/7)。
清水監督ですが、フィルムセンターの解説には約 35 年で 164 本の映画を撮ったとあります。また戦後一時映画界から遠ざかり戦災孤児を引き取って共同生活を送り、彼らと独立プロダクション 『蜂の巣映画部』 を設立して映画制作に復帰したらしい。『蜂の巣映画部』 は、蜂の巣のように子供たちがすし詰めになっていたことからの命名なのか、はたまた騒々しかったからなのかはわかりませんが、清水監督の人柄をよく伝えていると思います。子供たちに映画の魅力説き、かつ彼らに仕事を与えた監督だったようです。それだけで十分映画になりそうですよね (笑)。
玉田さんは今回、『團栗と椎の実』と『簪』 の2本を取り上げておられます。『團栗と椎の実』 は少年が主役の短篇で、『簪』 は田中絹代と笠智衆が主演ですが、この映画でも子供たちが重要な役割を果たしています。いずれも戦前に撮られた映画ですが、『團栗と椎の実』 には後先考えずに主人公の少年が木登りをするシーンがあります。それを玉田さんは 『この映画の主題とは子供の成長ではなく、木登りなのである』 と書いておられます。また東京で愛人をしている田中絹代と若いのに徴兵されていない笠智衆にはどこか現実離れした浮遊感がある。清水監督は娯楽映画の中で時代を捉えた監督だったようです。玉田さんはそれを 『「家がないこと」。このテーマを引き継ぎ、清水宏は戦後も子供を演出し作品を作っていくことになる』 と批評しておられます。
木にのぼりあざやかあざやかアフリカなど 阿部完一
玉田さんのコンテンツを読んでいて、ふと阿部完一の俳句を思い出しました。完一も子供が好きな作家だったなぁ。『少年来る無心に充分に刺すために』 『少年の牙はさふらんそしてさんざし』 など、一筋縄ではいかない少年を詠んだ句が多い。何事かの本質を描写するためには、僕たちは時に迂回路を取らなければならないようです。
■ 玉田健太 『映画金魚 No.002 ビル街の中の子供 - フィルムセンター 清水宏特集』 ■