大篠夏彦さんの文芸誌時評 『No.010 文學界 2012年10月号』 をアップしましたぁ。阿部和重さんの 『□(しかく)冬』 を取り上げておられます。ちょい SF 的な雰囲気を漂わせた、現在主流の前衛小説と呼んでいい作品です。SF 的に感じられるのは最先端科学知識などを小説に援用しているからではありません。言語的実験が行われているためです。そして大篠さんが書いておられるように、前衛作品である以上、言語実験の質が問題になります。
詳細は大篠さんのコンテンツをお読みいただければと思いますが、大篠さんが指摘されているように、『前衛小説はかつての現代詩に近接している』のは確かだと思います。短歌批評の高嶋秋穂さんも短歌界で同様の事態が起こっているという意味のことを書いておられましたが、純文学の世界ではど~も奇妙な出来事が生じている。小説も短歌もこのまま言語実験的な方向に進むわけがない。どっかで大転換といふか、それぞれのジャンルの一番の 〝強み〟 に回帰してくるはずです。問題は一時的とはいえなぜこんな現象が起こっているかですね。
純文学の世界では創作だけでなく批評も低調です。文芸誌を読んでいると、批評家と作家は知り合いなんだろうなぁといふ感じが、しばしばが伝わってきます (笑)。じゃあ作家の手の内を実感的に知っているので批評が深まっているかといふと、そうでもない。むしろ馴れ合いが透けて見える。大篠さんの時評は不肖・石川を時々慌てさせますが、そういうぬるさはないですね。大篠さんは、相当手厳しいことを書いてもとどめは刺さないので、石川を呆れされたりもするわけですが。それってけっこう老獪ですよね (笑)。
■ 大篠夏彦 文芸誌時評 『No.010 文學界 2012年10月号』 ■