星隆弘さんの演劇批評 『No.010 地点『光のない。』(F/T12・その5)』 をアップしましたぁ。2004年にノーベル文学賞を受賞したエルフリーデ・イェリネクさん原作の戯曲です。『光のない。』は東日本大震災と福島原発事故の衝撃によって書かれた作品です。もちろんイェリネクさんの作品ですから、通常の意味でそれを主題にしているとは言えませんが。
イェリネクさんは『光のない。』冒頭の『日本の読者に』で『わたしの作品に対しては、介入しても、どこかへ誘導してもかまいません。そしてまさにそのとき、たとえどこへ向けてであれ、なにが誘導されたのか、そこにわたしは興味を持ちます』と書いています。『地点』の三浦基さん演出は、作家の全面的な同意の元で行われているわけです。原作とは全く違う解釈を行っても、イェリネクさんは多分、異議申し立てをしないと思います。
三浦さんの戯曲の内容は星さんのコンテンツの内容を読んでいただければと思いますが、ポール・オースターやイェリネクさんの作品は、いい悪いの問題ではなく、いわゆるポスト・モダン文学の一つの到達点を示しているのだろうと思います。吉本隆明の著作に『重層的な非決定』がありますが、思想的確信を追い求めた作家も、思想から自由になろうとした作家も、現代という時代においてほぼ同じ地点に立ってしまうようです。
■ 星隆弘 演劇批評 『No.010 地点『光のない。』(F/T12・その5)』 ■