金井純さんの新連載ブックレビュー 『No.001 親御さんのための読書講座・中学受験篇』 をアップしましたぁ。しばらく前まで活字離れ、本離れがしきりに叫ばれていましたが、今でそれが当たり前の状態になっています。昔は読書によって得るしかなかったエンターティメントや恋愛、性、友情といった教育的要素を、今ではアニメやゲームで楽しく習得できるのですから、本が読まれなくなるのは当然といえば当然です。
しかし良質のアニメやゲームは本に、優れた文学に似ているのです。本は人間の思考の原型的なものだと言えるくらいです。本には最初のページがあり、終わりのページがある。1人の人間が、自分が所属している世界とは違う世界を体験し、生きることができるのです。アニメやゲームに比べれば、確かに小説はまだるっこしく、読者に読むための努力(漢字の読解などを含めて)を強いるものです。しかしそこで表現されている世界はアニメやゲームとはまた違う質のものです。
小説世界では主人公は主人公であっても、世界の中心ではありません。個の力では変えようのない世界に属しながら、世界と戦い、その戦いの中で、個の思想を育んでいく存在です。この思想は時に登場人物数人に分配されます。つまり小説作品の構造自体が思想的構築物であるわけです。ハピーエンドなどない悲劇・愚行であろうとも、小説が描こうと指向するのは世界・人間の本質的思想、存在様態であります。
金井さんには 『子供向けのブック・レビュー』 をお願いしたのですが、単純なブックレビューではターゲットである子供(およびその親)に、なんの貢献もできないだろうという結論に達しました。そこでタイトルを 『親御さんのための読書講座・中学受験篇』 として書評を書いていただくことになりました。
金井さんが書いておられますが、活字離れが進んだ、というより決定的になりつつある現状で、積極的に本を読んでいるのは中学受験をひかえた子供たちです。それは 『大いなる実験』(金井さん) であるかもしれません。金井さんには、中学受験で頻出する本のレビューを中心に行っていただく予定です。
もちろん学習参考書的な 『正解』 を求めるためのレビューではありません。読書の前提となるいわゆる小説的世界観を包括的に解説してゆくブックレビューです。子供向けの本には小説の原点が含まれていると思います。普段、子供向けの本を読まない大人の読者の方も、ぜひぜひ楽しんでくださいませませ。
■金井純 新連載ブックレビュー 『No.001 親御さんのための読書講座・中学受験篇』 ■