水野翼さんの文芸誌時評 『 No.005 S-F マガジン 2012 年 11 月号 』 をアップしましたぁ。夢枕獏さんと寺田克也さんの新著 『十五夜物語』 を取り上げておられます。ギアナ高原に旅行した時にできた 『旅の絵本』 であります。作家としての長い修練もあるんでしょうが、貘さんはホントに生粋の作家さんですね。エセーや評論を書いたり対談したりするよりも、物語を作る方が簡単だろうなぁという雰囲気を漂わせています。
そんで 『S-Fマガジン』 は 『日本のSFの夏』 といふ特集であります。で、水野さんは日本の SF について考えておられます。『日本では、サイエンス・フィクションは 「フィクション」 の方にウェイトがおかれている。この場合の 「サイエンス」 はいわゆる科学というより、何かの観念に向けられた抽象的なもの、ファンタジーの枠組み、といった感じがする。普通の児童文学と違い、大人の酔狂な本気を示す道具立てが用意されている、といったふうな』 という考察です。
正しいのではないかなぁと思います。日本で欧米型のSFの傑作がなかなか生まれないのは、日本の作家の取材能力が劣っているからではないと思います。絶対不可知の神を日本人が信じきれないからだと思います。日本人が神について考察すると、ほとんど間違いなく、太古の汎神論的な神の像に行き着きます。夢枕貘さんの作品世界ですね。その意味で池田さんの、夢枕さんは『本質的に SF 作家なのだといえるのかもしれない』という考察も、正しいと思うのでありますぅ。
■ 水野翼 文芸誌時評 『 No.005 S-F マガジン 2012 年 11 月号 』 ■