水野翼さんの文芸誌時評 『 No.002 ハヤカワ・ミステリマガジン 2012 年 12 月号 』 をアップしましたぁ。特集は 『ゴシックの銀翼』 です。ゴスロリに代表されるように、日本でのゴシックは一種のファッションですね。保守的であるところが本家と奇妙に似通っています。コスプレは基本的に自己愛の強い人がはまる傾向があるので、どんなに奇抜な格好をしていても意外とまぢめな方が多かったりします。
物語作りにおいて抑圧はとても大きな要素です。でも社会的な身分的抑圧、格差といふものは、ヨーロッパにはとてもかなわないような気がします。ご主人(貴族)と執事、メイドという格差は絶対に超えられない社会制度なわけです。そのためヨーロッパでは抑圧された執事・メイドの犯罪小説、その逆にご主人と一体化してしまう執事やメイドを作品化してきました。後者は一種の純愛小説にもなりえます。自我意識を棄てて、ただひたすらご主人様に尽くすお話しですから。
こういった社会的格差を現代日本で探そうとすると、どうしても裏社会などに題材を求めがちです。江戸期までの封建社会、特に幕府が強大な力を持っていた江戸初期などは、かなり身分的抑圧が強く働いた時代だったのですが、それを舞台にしても、日本の作家さんは制度を越える方向に物語をもっていきたがる傾向があります。過去を自分たちの願望で作り替えてしまっているわけです。文学金魚時評陣が、日本の時代小説は一種の SF だとおっしゃるゆえんであります。
■ 水野翼 文芸誌時評 『 No.002 ハヤカワ・ミステリマガジン 2012 年 12 月号 』 ■