小原眞紀子さんの連載評論 『文学とセクシュアリティ 第5回』 をアップしましたぁ。少しずつ小原さんの評論に慣れてきましたが、かなり意欲的な批評ですねぇ。『源氏物語』 は西暦 1000 年頃の成立で、1000 年を超えて読み継がれてきた古典中の古典です。鎌倉時代から現代まで、様々な読み方が為されてきましたが、小原さんの読解はそのどれとも違うと思います。斬新というより原理的読解ですね。
学問的な読解を除けば、『源氏』 の読み方は、作家が創作活動のインスピレーションを得るための読解方法か、男女間の感情を綾を読み解く雰囲気批評に分かれていたと思います。しかし何からインスピレーションを得るかは作家によって異なりますし、男女関係は時代によって大きく異なります。確かに両者ともに様々な読解成果を上げたとは思いますが、その読解の大きなブレが、『源氏』 をいつまでも謎の書物にしてきた面があると思います。
小原さんの批評は時代に左右されないセクシュアリティを基礎にしてます。ジェンダーと呼ばれるような、単純な生物学的、社会的男女性差のことでないことは、批評の中に掲げられている 『テキスト曲線』 を見ればおわかりだと思います。また小原さんは 「優れた文学には、不必要な韜晦、つまり無用の隠し事はない」 という姿勢を貫いておられるようです。それは確かにそうだと思います。特に傑作と呼ばれる作品ではそうでしょうね。小原さんの 『文学とセクシュアリティ』は、文学金魚が掲げる 『文学原理主義』 と 『文学総合主義』 という2つの方針にとっても、大変重要な作品になりそうな予感がします。