谷輪洋一さんの文芸誌時評 『No.005 すばる 2012年08月号』 をアップしましたぁ。今年の5月22日に98歳で逝去された、吉田秀和さんの追悼特集を取り上げておられます。吉田先生は最後まで現役作家でした。凄いことであります。
最近、作家は長寿ということを考えなくなったように思います。医療の進歩などで平均寿命は伸びているのですが、死の間際までスリリングな現役創作者であり続けることは、現代ではますます難しくなっているようです。
葛飾北斎は89歳没で、富岡鉄斎は87歳没ですが、死の間際まで新しい仕事を世に問い続けました。しかし文学者では長寿がプラスに働いた作家は少ないです。最近では97歳で亡くなった俳句作家の永田耕衣さんくらいでしょうか。
最後まで現役だった作家の特徴は、捨て去りながら前に進んだことにあるように思います。世界で、あるいは自分の中で何が完成し、何が終わってしまったのかを正確に見切り、新しい表現領域へと貪欲に突き進んでいったのです。
肉体は在るのに表現が終わってしまうことほど辛いことはないと思います。動物的な勘やちょっとばかりの才能では長寿を生き抜けないでしょうね。北斎や鉄斎、耕衣は確かに努力の人たちでした。しかし努力の方向性が正しかったことが、年老いても創造性を維持できた理由だと思います。彼らは自己の芸術に対して透徹したヴィジョンを持っていたと思います。
PS.
フェンシングの銀メダルと、卓球団体の銀メダル以上の確定、おめでたうっ!!!。陸上や水泳などのプリミティブな競技と違って、技を競う競技の奥深さと難しさを見せつけられた思いです。卓球女子団体選手には、あと一つ、素晴らしい闘いをしていただきたいと思います。