池田浩さんの文芸誌時評 『No.001 ハヤカワ・ミステリマガジン 2012年7月号』 をアップしましたぁ。特集では 『アルセーヌ・ルパン』 の作者、モーリス・ルブランの 『コナン・ドイルへの弔辞』 が収録されているようです。読んでみようかなぁ。ドイルはもちろん 『シャーロック・ホームズ』 の作者であります。
二人は同時代人ですが、ルブランはフランス人、ドイルはイギリス人です。現在から振り返れば、ヨーロッパ最後の文化全盛・爛熟期にルパンとホームズという、推理・サスペンス小説の二大ヒーローが生み出されたのはおもしろいことですねぇ。池田さんが書いておられるように、「ルパンはシャーロック・ホームズへのアンチテーゼでもある。善と悪の二項対立は、ミステリの生まれたキリスト教圏での定石パターン」 であります。
また 「もちろん善と悪は微妙に侵食しあう。シャーロック・ホームズは悪と戦いたがる正義の味方なのではなく、観察と推理の魔に取り憑かれた男で、纏う雰囲気はルパンより暗い」 のであります。ホームズはヴィクトリアンの退屈した私立探偵で、頭脳明晰ですが、アヘン中毒者でもあります。泥棒のルパンに暗さがあるのは当然ですが、彼は富豪から奪う 「怪盗」 であり、「正義の爽快感に類似の匂い」 をまとっています。明暗あわせもっているから、ホームズとルパンは魅力あるキャラクタとして今も生き続けているのでしょうね。
今、深夜に 『LUPIN the Third -峰不二子という女-』 というアニメが放送されています。『ミステリマガジン』 の特集は、このアニメを意識したものなんでしょうな。テレビの力は偉大であります。で、アニメの 『LUPIN the Third』、いいですよ。モンキー・パンチの原作にあった暗さが全面に押し出されています。
たまたま何回かアニメの 『LUPIN the Third』 を見ましたが、ルパンがなぜ峰不二子に魅かれているのか、その理由が説明されていました。ルパンによれば、峰不二子は 「退屈なこの世の中を面白くしてくれる、たった一つのお宝だ」 ということだそうです。いわゆるファム・ファタール (運命の女) ですね。不二子はルパンにとってのみ、ものすごく魅力的な女性だったと考えると、モンキー・パンチによる 『ミステリマガジン』 の表紙イラストも、ちょっと感慨深いものになるかもしれませんです。
池田さんが書いているように、ヒーロー、アンチ・ヒーロー像には 「新しいものなど何もない。新しいと感じる部分があるだけ」 なのかもしれません。確かにガリレオ先生に至るまで、そのイメージは一貫しています。創作は新しくなければなりませんが、まず「原理を意識するべき」なんでしょうねぇ。