水野翼さんの『papyrus 2012年4月号』の時評をアップしました。『papyrus』ってグラビア系文芸誌のようですね。金魚屋もみならいたいですぅ。やっぱ絵のない本ってつまらないですよね。でも金魚屋の場合、芸能人の方々のように顔写真をウリにすることは難しいかもしれません(笑)。
むか~しむかしの話ですが、違いのわかる男ってことで、遠藤周作さんらがネスカフェゴールドブレンドのCMに出演されていました。野坂昭如さんもなんかのCMに出演されていたやうな。昔は違ったなぁなんていうと、すんげぇ差別的といふか権威的になりかねないんですが、でも彼らの姿には、CM出演ってなにかの冗談って感じが漂っていたやうに思ひます。彼らの本業である作家という仕事を、見ている僕らがちゃんと認知していたせいでしょうね。
水野翼さんが書いておられた島本理生・西加奈子さん、恥ずかしながら僕は存じ上げませんでした。ウィキペディアで調べたら、超売れっ子の作家さんだったんですね。申し訳ない。今度読んでみます。でも現代って興味が拡散している時代だなぁとつくづく感じます。別に文学だけじゃなく、Mr ChildrenとかB’zは新譜を出すたびにミリオンセラーに届く勢いなのですが、彼らの曲をぜんぜん知らない人も多い。不景気とはいいながら、それだけ日本が豊かになったってことなんでしょうね。確実な固定ファンを確保できればビジネスは成り立つわけです。AKB48も同じですね。熱狂的ファンがいれば、数はそれほどでなくても、1人当たりの支出額の多さでビジネスを支えられる。
でも文学の世界って、芸能界のように市場の変化に対応したビジネスシステムになっていませんよね。相変わらず新人賞などで作家を発掘し、編集者が原稿をチェックし、出版社が書店に本をまくっていうのが基本です。これ、こわしちゃったら?と思うことが時々あります(笑)。村上春樹さんとか、自分で会社作って本を出して販売してもビジネスになるでしょ。出版業ってそれなりに優秀なスタッフが1人いればできますから。春樹さんのようなベストセラー作家でなくても、そういうシステムでやっていける作家って多いんじゃないかな。小説家って小説書きが本業だから、作品で食えれば余計な雑文は書かなくて良くなるわけだし。今、作家の印税って8~10%くらいですが、これを直販に切り替えたら食べていける作家が増えます。1500円の本を1万部売れば現状では印税は最高150万円ですけど、直販で純利20%を確保できれば300万です。1年1冊でギリギリ食べられますぞ(笑)。
従来の文学出版システムは、出版社の見識が確かなものである限り揺らがないと思います。いい作家と優れた作品を次々に見出していける見識ですね。それができなくなれば、このシステムはきつくなるだろうなぁ。出版業界のパイは年々縮小していますが、出版社のガタイはスリム化できていません。経費がかかる割には売上が少ないわけです。なにがなんでも本を売るか、出版社のガタイを縮小して精鋭少数にするか、どっちかの道しかないんでしょうね。